医療用スクラブの名前の由来とは?
近年医療現場では、スクラブを着用している関係者を多く見かけるようになりました。これまで医者や看護師と言えばボタンタイプの白衣を着ているというイメージがありましたが、年々スクラブに移行し始めているのが現状です。
そもそもこの医療用ユニフォームは、なぜスクラブと呼ぶのでしょうか。また、その機能面なども踏まえて詳しく説明します。
スクラブと聞くと、洗顔料や洗剤などに使用される研磨剤を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。スクラブという言葉は、研磨剤やゴシゴシ洗うと行った意味を持っています。医療用のスクラブ白衣も同様に、ゴシゴシ洗うという意味が語源となっているのです。
スクラブ白衣に使用されている生地は頑丈なポリエステル素材が用いられ、擦れたり強く洗ったりしても傷むことはありません。
形状記憶の性能にも優れているので、型崩れの心配をする必要もないのです。このように高い耐久性を持っていることから、医療用スクラブ白衣と名付けられました。このようにゴシゴシ洗うという語源から着ている医療用白衣のスクラブ。
医療現場では、様々な薬品や血液などが白衣に付着することが考えられます。また、さまざまな治療を行う医師にとっては、動きやすさも必要です。医療関係者の業務中の動きや仕事内容などを総合して、スクラブに使用されている素材や形状などは最適であると言えます。
これまで医療現場で主流となっていたナース服や白衣から、どのようにしてスクラブが誕生し移行していったのでしょうか。スクラブ誕生までの白衣の歴史は、ナース服の起源と言われている中世にまで遡ります。かつてのナース服は、教会で神の教えを伝えていたシスターと呼ばれる人達が病気や怪我の看護をしたことから始まりました。
シスター服のなごりから、丈の長いワンピースに白いエプロンと帽子という格好が当時のナース服の特徴です。その後、日本でも看護婦の養成が始まり、ナイチンゲールの影響を受けた長い丈のワンピースでかっちりとした印象を与えるようなデザインでした。
戦後になると綿100%の素材が広まり、丈も膝あたりまで短く動きやすくなりました。1960年を過ぎると、ファッションの多様化が進んだことによりナース服も進化を遂げていきます。ピンクやブルーなどカラー展開がされたり、さまざまな形状のデザインが増えたりしてきました。
同時に手入れがしやすいポリエステル素材を導入し、機能性も高まります。その後も進化を続け、パンツスタイルや有名デザイナーのナース服などが流行し始めました。このようにナース服は、中世から日々変化と改良が続けられてきたのです。
1990年代に入ると、ナース服に対して批判が集まっていたアメリカでスクラブが誕生します。この背景には、ナース服は医療的な印象を与えすぎていて患者の不安や緊張感を高めていることが挙げられます。リラックス感を患者に与えるために、ラフなデザインのスクラブが誕生しました。
そして、スクラブは世界中で広まっていき、日本でも多く用いられるようになったのです。
スクラブのメリットは、患者に安心感を与えゴシゴシ洗っても傷まないという点だけではありません。他にもたくさんの特徴があるのです。ポリエステル素材は、耐久性だけでなく速乾性も兼ね備えています。薬品や血液などで白衣が汚れる可能性が高い場合、1日に何着も着替えることがあるでしょう。
また、医療関係者は清潔感を与えなければならないため、その都度白衣を交換する必要も出てきます。このような場合でも、スクラブは速乾性があるので洗濯後はすぐに乾きます。時間が不規則で頻繁な着替えが必要な仕事であるからこそ、スクラブのような素材は必要不可欠なのです。
医療関係者は、緊急事態の現場へすぐに急行しなければなりません。さらに、手術や治療などでは、動きやすく可動域が広い方が良いでしょう。スクラブはゆったりとしたデザインなので、締め付けられているようなストレスを感じません。
首元もゆったりとしているので、窮屈さがなく動きやすくなります。その上、首元の開き具合などのデザインやサイズが豊富なので、自分の体型にぴったりと合ったものを見つけることが可能です。通気性も良いので、涼しくて快適に過ごすことができます。
仮眠を取る場合でも、睡眠の邪魔をすることはないでしょう。
医療用白衣のスクラブは、病院や歯科医院など様々な医療現場で使用されています。その機能性の高さから、近年ではエステや介護業界でも広く取り入れられるようになりました。マッサージや鍼灸、整体院などで施術スタッフがスクラブを着用している姿を見たという人も多いのではないでしょうか。
衛生面でも安全であり、施術や治療など人の体に触れる仕事には最適なユニフォームなのです。カラー展開も豊富なのでチームや業種などで色分けすることができ、作業効率化の向上も期待できます。また、インナーが透けにくい素材なので、女性も安心して着用することが可能です。
ちなみに、マタニティ用のスクラブもあり、妊娠中の仕事も負担なく行えるでしょう。
これまでの白衣と言えば、洋服の上から羽織る丈の長いタイプでした。
もちろん現在でも医療現場で取り入れられていますが、スクラブの普及により減ってきているのが現状です。従来の白衣はかつてのナース服と同様に、医療的な印象を強く与え患者の不安や緊張感を高めていると行った声があります。
病院で血圧の測定をすると高血圧になってしまう、白衣性高血圧という言葉をご存知でしょうか。これは、病院に行くことへの不安や医師に対する緊張感が影響していると言われています。このような自体を避けるためにも、安心感を与えるような病院と医療従事者の雰囲気が大切なのです。
また、従来の白衣には、ボタンが縫い付けられています。乳幼児を扱う小児病棟で万が一ボタンが取れてしまったら、誤飲などの危険性が考えられるでしょう。他にも、患者を抱きかかえたりする時に、ボタンやファスナーなどが当たって怪我をすることも想定されます。
このような事故を防ぐためにも、何も縫いつけられていないスクラブは最適な白衣であると言えます。スクラブはラフな見た目をしているので、小さな子どもや高齢者には安心感や親近感を与えることが可能です。医療関係者にとっても患者にとっても、スクラブは大きなメリットをもたらしてくれます。